Vol.34 「緊張感」を楽しむ
- 園部貴弘
- 11 分前
- 読了時間: 3分
社会人になり、年齢を重ねると、「ドキドキする瞬間」というのは本当に減ってくる。
仕事では経験を重ねることで苦労せずに出来ることが増え緊張感が薄れる。日常生活でも心が大きく動くような場面は少なくなる。そんな中、僕が競技ゴルフにのめり込む理由の一つは、この「緊張感」が得られるからだ。試合に出場し、勝負の場に立つとき、胸の奥で感じるあの高揚感。普段の生活では味わえない感覚がそこにある。

月例杯などのクラブ競技や外部の試合の朝、緊張と期待、そして試合に勝利するイメージが入り混じった独特の感覚にさらされる。 特に1番ホールのティーショットに向かうとき、胸が高鳴り、手に少し汗がにじむ感覚がたまらない。緊張で体が強張る一方で、その裏には「これを乗り越えたい」という強い欲求が湧いてくる。そして、その緊張感が成功体験へとつながったとき、得られる快感は言葉では表せないほどだ。

なぜ緊張感が快感につながるのか――それは、生物としての本能に根ざしているのかもしれない。緊張を感じると、心拍数が上がり、アドレナリンが分泌される。これは体が戦いや挑戦に備えるための自然な反応だ。普段穏やかな状態では得られないエネルギーが体に満ち、その結果、目の前のプレッシャーに打ち勝つことで快感が生まれる。競技ゴルフは、その「挑戦」を日常の中で手軽に味わえる貴重な場だと思う。
僕自身、初めて月例杯に出たときの緊張は忘れられない。
普段のラウンドでは気にも留めなかったティーショットが、あのときはまるで重りがついているように感じられた。だが、そのティーショットがOBにならず、無事フェアウェイに置けた瞬間の達成感は格別だった。その後の数ホールは緊張感が続いたが、プレッシャーに打ち勝つたびに「自分は出来るんだ」という実感が得られた。

緊張をすると、身体がこわばり「いままで普通にできたことができなくなる」といったマイナス面が強調される。しかし、緊張を楽しむことが出来たのなら、いままでの自分をはるかに超える成果を出せるプラスのエネルギーになると思う。実際、僕は、なんとなくラウンドしているときより、試合の時の方が確実にスコアが良いことが多い。
緊張感を楽しむコツは、まずは「それを受け入れること」だと思う。
緊張を敵視して「消そう」とするのではなく、「これは自分を高めるためのエネルギーだ」と考える。僕は緊張を感じたとき、あえて自分の心拍数に耳を傾け、体の変化を観察するようにしている。そして、それを「今、この瞬間を全力で生きている証拠だ」とポジティブに捉える。すると、不思議と冷静さが戻り、自然なプレーができるようになる。
さらに、緊張感を味わうことで「集中力」が研ぎ澄まされるのも魅力だ。試合では、普段以上に細かい部分まで意識が行き届く。たとえば、風の方向やグリーンの微妙な傾斜、芝目の流れ。緊張感が高まるほど、それらの情報が鮮明に感じられるようになる。結果として、ゴルフに対する洞察力や対応力が自然と磨かれていく。

僕が、外部の試合に挑戦する理由も、ここにある。
知らないコース、知らない相手、そして独特の試合の雰囲気。その全てが緊張感を生み出し、同時に「快感」へとつながる。特に、後半の勝負どころで緊張が最高潮に達したとき、冷静に自分のプレーを貫けた瞬間の喜びは、他では得られないものだ。
緊張感は、決して恐れるものではない。それを楽しむ心を持てば、競技ゴルフは単なるスポーツではなく、人生を豊かにする「刺激」や「体験」に変わる。ゴルフの試合が提供してくれるこの特別な感覚を、多くの人に味わってもらいたい。そして、試合を終えた後に思うのだ。
「このドキドキがあるから、また挑戦したい」と。
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